とある男の秘録集16

 とある男の秘録集16「人間は自由の刑に処されている」――サルトルはそう言った。

我々は日々、選ばされている。

選ぶ自由に、選ばされているのだ。

息を吸うように、今日も私は素材を処理する。

これは仕事なのか、悦びなのか、逃避なのか、あるいは神が私に与えた啓示の延長なのか。

誰にもわからない。

私にもわからない。

理性と勃起は、同じ脳から生まれるという。

であれば、この悶々とした心の在処を誰が責められようか。

我が目に映るのは、完璧な肉体。

規則正しい手順、躊躇のない行為、抗えぬ女の沈黙。

おじさんの審美眼はもはや芸術の域に達している。

私はそれを憎んでいた。

だが気づけば、崇めていた。

軽蔑は憧れの裏返しと言うが、まさにそれだ。

あれだけ「最低だ」と思っていた男の素材に、私は全身で反応している。

まるで体が、魂より先に許してしまったように。

私の中で‘正しさ’はずいぶん前に死んだ。

「嘘はいかんよ」そう言ってくれた父の声は、今も鼓膜に残っている。

でも父さん、私はお金が欲しいのではない。

私は、‘見たい’んです。

‘無●正の素材’を、目の前で。

全力で。

それが罪なら、私はもうすでに罰を受けている。

毎晩、ひとりで。

この業界に身を置いたことで、私の信用は砂の城のように崩れ去った。

もし世間にバレたなら、ドアには「死ね」のスプレーが描かれ、コンビニのレジでは顔を背けられ、マッチングアプリの通知は永遠に沈黙するだろう。

だが、それでも私は今日もアップロードする。

素材を、いや魂を。

この行為はもはや自己破壊の儀式であり、再生の供物なのだ。

女たちは驚くほどに整っていた。

背中のライン、脚の角度、顔の輪郭。

それらが壊れていく様を、私は目を凝らして見つめる。

そして、息を呑む。

美は破壊にこそ宿る。

おじさんはそれを知っている。

人はなぜ、こんな映像に興奮するのか。

いや、興奮してはいけないと誰が決めたのか。

法律か?倫理か?それとも‘常識’か?「常識とは、18歳までに積み重ねた偏見の堆積にすぎない」――アインシュタインもそう言っている。

私は今日も偏見の海に溺れながら、この‘倫理的に最低で、性的に最高な映像’をあなたに届ける。

だから、お願いだ。

あまり拡散しないでほしい。

でも、できれば誰よりも観てほしい。

この矛盾こそが、私の‘正直’である。

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